読者の疑問

今借りている部屋をすぐに退去したいんだけど
契約後2年未満なので「短期解約違約金」がかかると言われました
支払う必要はあるのですか?
安く入居できるのはありがたいけど思わぬ落とし穴があります
初期費用が安くなった分は家主が損しないような仕組みになっているんです
今回は初回契約期間中に退去する場合かかる『短期解約違約金』について解説していきます

筆者は建築関連で20年働いた後不動産会社で4年勤務
宅地建物取引士であり、自らの引越経験も12回あります
この経験を生かして執筆しています
短期解約違約金は絶対に払わないといけないのか
結論から言うと契約書の特約に短期解約違約金について記載があれば支払う必要があります
例としては『賃貸人が1年以内に解約した場合は短期解約違約金として月額賃料の1か月分を支払う事とする」などという類似の文言がかかれている場合に支払い義務が発生します
支払いが発生するタイミングは賃貸借契約が成立した時点(=宅地建物取引士が「重要事項説明書」にもとづいて説明後、契約書にあなたが署名、捺印して、家主の署名、捺印が完結した段階)以降に解約した場合です
支払いを怠ると保証会社が入っている場合であれば保証会社から支払うまで通知が来ます
連帯保証人を立てている場合はその保証人にも請求が行くことになります
最悪の場合はその家賃保証会社の入っている団体加盟が保証する物件には住めないことになります
いつかは支払わなければならないのであれば早々に支払いを済ませてしまった方がよいと思います
又、金銭的に余裕がなく一括で支払えない場合は管理会社へ事情を話して分割してもらうなど相談をしてみてくださいね
支払う意思を見せることは重要で今後の支払いを有利に進める一歩につながります

短期解約違約金とは
賃貸借契約後、一定期間内に退去した場合に支払うと決められている違約金の事です
期間や金額に決まりはなく物件ごと、管理会社ごとに決められています
また昨今の賃貸市場では初期費用を安くするための施策で『ゼロゼロ物件』と呼ばれる敷金礼金など0円で契約できる物件が増えていることも影響しています
家主側のディフェンスともいうべき短期解約違約金は早期解約者がいた場合に業者への広告料や修繕費などでかかった経費の穴埋めとして機能します
敷金礼金ゼロでおまけにフリーレント2か月分付けた部屋の住人が2か月で出ていったらタダで貸していることになり大赤字です
家主からすればちょっとでも元を取り戻せるための秘策であり、入居者にとっても長く住めれば初期費用が安くなるので悪い制度ではないのかと思います
解約違約金は特約条項
賃貸借契約書を見てもらったらわかると思いますが基本の条文にある違約金は(延滞損害金)のみです
これは家賃の支払いが遅れた時に遅滞損害金を支払いますというもので退去時に支払う短期解約違約金とは違います
短期解約違約金は契約書の最後か、別紙にて特約条項の項目があり記載されています
ココがポイント
契約書における特約とはその契約の中で本来の契約事項と異なることや、契約書にない項目を追加するので重要な事項が多い
契約自体は普通であれば問題がないのですが特約は〈特別の条件を伴った契約をすること〉になるので重要ポイントとして特約だけは押さえておきましょう
短期解約違約金の支払い時期やタイミングは?
中途解約時に違約金は必ず必要?
短期解約違約金に関して支払わなけれなならない条件はすべて契約書に定められています
賃貸借契約は多くの場合期間を2年とすることが多く、初期契約において
「2年以内に退去したら」とか「1年未満」など期間が定められています
定められた期間内であれば必要になりますが、更新後や予め定められていない場合は必要ありません
ただし退去予告の期間が定められている場合(*賃貸部屋の場合は1か月が多い)がほとんどなので
その期間前に退去予告をしていないと予告義務違反で家賃の1か月分を負担しなければならないなど短期の解約違約金ではなく通常の違約金がかかります
余計な出費となるので注意しましょう
ココがポイント
退去の申出は電話ではなく書面で行う決まりがあることも多いのでぎりぎりにならないようにしましょう
短期解約違約金が必要ない場合
自己都合退去する場合で初回契約契約期間中の退去で短期解約違約金の特約が付いている場合に支払いが必要になります
当たり前ですが家主都合での退去や更新のタイミングでの退去、更新後の退去、又特約のない物件の初回契約時の中途解約などでは必要ありません
近隣トラブル等で退去する場合も短期解約違約金は払うの?
契約書に短期契約違約金の記載があり、署名押印している場合は支払いの義務があります
騒音トラブルなどで退去をする場合でも契約上の決まりなので基本的には支払う必要があります
騒音などのトラブルは契約とは別の問題なので当事者との損害賠償請求で補填するようになりますが、そんなめんどくさい事ふつうはしませんよね
近隣の騒音などで誰もが騒音と感じるレベルで管理会社に対処を依頼して改善されなくて退去する場合、管理会社も承知している問題なので充分に交渉できると思います
情状酌量の余地はあると思うので管理会社にしてみたらいいと思います
また、急に予期せぬ転勤が決まったなどの場合でも支払いの義務はあります
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短期解約違約金法的な金額について
違約金の金額や上限の決まりは?
消費者契約法
第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
消費者契約法では家主が事業者で、借主が一般消費者の場合の居住用建物の賃貸借契約は消費者契約法の適用があり、違約金の額が賃貸人に不利益になる場合は一定金額以上の部分については無効になることを示しています
賃貸借契約が中途で解約された場合に家主が受ける損害額で一般的に1~2か月が上限とされています
この平均的な損害額を超えて設定した場合は無効です
一般的には『2年以内の解約の場合は賃料の1か月分、1年以内の解約の場合は賃料の2か月分』『1年以内の解約の場合は賃料の1か月分』という特約が多いようです
ココに注意
支払い額について契約書の記載が 『賃料の1か月分』だと家賃のみ、『月額総支払額の1か月分』だと月に支払っている賃料や共益費など含むすべての金額となります
賃料の1か月分では共益費やその他の金額が入るかどうかは解釈により違ってきますので確認しておきましょう
短期解約違約金に消費税はかかる?
国税庁のホームページより
建物賃貸借契約を中途解約する場合の違約金
建物の賃貸人は、建物の賃貸借の契約期間の終了前に入居者から解約の申入れによる中途解約の違約金として数か月分の家賃相当額を受け取る場合があります。この違約金は、賃貸人が賃借人から中途解約されたことに伴い生じる逸失利益を補填するために受け取るものですから、損害賠償金として課税の対象とはなりません。
消費税は逸失利益を補填するために受け取るものなので課税の対象とはならないようですね
まとめ
予期せぬ事態で引っ越すことになった時、短期損害違約金を支払わなければならないなんて大変です
でも裏を返せば短期解約違約金の特約が付いている物件って従前より安く入居できる物件がほとんどです
また余りに高額なものは無効なのですから、支払う事態になった時はあきらめが肝心かもしれません
『本来ならば支払う必要があった金額の支払い』と割り切り心機一転しましょう
ただしあまりに不条理な場合は宅建協会など公の機関に相談してみましょう
社会通念上適切でないと判断した場合は適切に対処してくれます
参考記事⇒賃貸物件を申込後キャンセルしたい!【手付金と費用】まとめ