納得できない家賃の値上げは断固拒否『供託制度』を利用して交渉

不動産の法律関連 困りごと

納得できない家賃の値上げは断固拒否『供託制度』を利用して交渉

2020-11-18

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読者の悩み

管理会社から家賃の増額のお知らせが来ました
突然で納得できないし払いたくないんだけど
どうしたらいいですか?

このような悩みのある方にお答えします
急に家賃が上がったり世の中の不条理ってたくさんありますが、言われるがままに従う必要はないんです

法律があなたの味方です『家賃の供託』を利用して泣き寝入りしないで、交渉できる状況をつくりましょう

そんな供託の制度についてお伝えします

筆者は建築関連で20年働いた後不動産会社で4年勤務

宅地建物取引士であり、自らの引越経験も12回あります

この経験を生かして執筆しています

家賃の増額通知が来たらどうするか?

    • 増額に同意してそのまま住む
    • 増額に同意しないでそのまま住む

増額理由を確認して、同意しない場合はその旨を家主へ伝えて、家賃の受け取り拒否されたら家賃を供託する

  • 転居する

の3つに当てはまりますが今回はこの2番増額に同意しないでそのまま住むについて考えていきましょう

賃貸物件の賃料を値上げすると言われた場合の対処方法

家賃増額理由の確認

家賃の増額は家賃の更新時に行うことが一般的ですが、オーナーチェンジの際やリフォームなどによって行われることもあります

借地借家法では増額しても良い理由が記されています

借地借家法第32条第1項

(借賃増減請求権)
建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

要約すると下記の項目に当てはまる場合のみ家賃の値上げを検討出来るという事です

  • 固定資産税など租税の増減により土地や建物の価格が増減した場合
  • 経済情勢の変動があった場合
  • 近隣の類似物件の家賃と比較して不相当になった場合

上記以外の理由での家賃の増額は認められていないのでこの事例のどれに当てはまるのかチェックしてみます

どれにも当てはまらない場合は不当値上げによるものとみなされ無効になります

不当な値上げであれば行政の相談窓口や宅建協会での無料相談所にて対応してもらえることが多いです

*無効でも家賃の支払いは行う必要があるので決着がつくまでは「家賃の供託」を利用できます

自分はどうするか決めます

自分はどうするべきか考えてみましょう

妥当なので値上げに応じるのか

値上げには応じないで供託する

引越しを検討する

家賃の供託の制度について

家主や管理会社との話し合いで折り合いがつかない場合でその物件に住み続けるのであれば家賃は支払わなければなりません

受け取り拒否された場合に、

『相手が受取らないのだから支払わないでおこう』

なんて勝手に家賃を払わなければ家賃滞納になります

家賃を支払ってない場合で調停や裁判になった時、滞納を理由に退去を迫られる場合もあります

又、原契約による家賃が決まっている以上お互いの合意がなければ家賃の値上げは出来ないというのが前提ですからあわてて値上げを提示された家賃を支払う必要はありません

もし値上げに同意する場合は契約更新書や覚書等の書類に署名捺印します

賃料の変更はお互いの同意があり初めて適用されます

供託とは

供託所(法務局や法務局の支局)にお金をあずけることによって、家賃や地代などを支払ったことにできる制度です

家主が家賃を受け取ってくれない時などに家賃支払いと同じ効果を認めてもらえます

供託すると家主には「供託の事実」が通知されます

供託した場合は法務局から直接家主へ連絡がいくのでこちらから払った旨を伝える必要はありません

(借地借家法32条2項)

建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

供託の方法

供託するには「供託原因」が必要です

「供託の原因」とは受領を拒絶していて払えないという理由です

    • 受領拒絶

家主が家賃を受け取ってくれない
単に受け取り拒否だけでなく家賃の増額に同意しないのなら契約更新しないとか明け渡すように
行ってきた場合でそこに住み続ける意思がある場合など

    • 受領不能

手渡しの場合などで家主の居所が分からなく渡せない場合など

    • 債務者不確知

家主が亡くなったり、譲渡や売買で支払先が分からない場合など

供託は、債務履行地の供託所(法務局)においてある「供託書」に必要事項を記入して提出し、「相当と考える家賃」を供託します
今まで払ってきた家賃を預ければ滞納にはなりません

供託後どうなるか

1話し合いで決着

2調停で決着

3調停で決着がつかず裁判へ

当事者で話し合ってもお互い上せず合意に至らない場合は調停を申し立てることになります
調停前置主義が民事調停法で定められていて裁判の提訴提起の前に調停を申し立てなければならないことになっています

そして、「調停」が成立しない場合には「訴訟」を提起することになります

こうなった場合は弁護士に頼むようになりと思いますが

いくらの賃料が適正なのかを巡り、当時者双方から周辺の賃料相場や土地の評価資料が出され検討されます

又納得がいかない場合は不動産鑑定士の鑑定が必要ですが費用が50万~100万ぐらいかかることが多いので要注意

費用は、通常は鑑定を申し出た方が一時的に支払うが「訴訟費用」に位置づけられ、最終的に判決が出れば、判決で訴訟費用の分担割合が決められます

例えば家主が希望する増加額の半額が認目られれば、借主は訴訟費用の半額を負担することが多いが、そうなると借主は25万円(鑑定料を50万円とした場合)もの訴訟費用を負担すべきことにもなります

逆を言えば、家賃の増額が認められなかった場合は全額家主負担となります

民事訴訟の訴訟費用は敗訴者負担が原則ですが(民事訴訟法61条),家事調停や家事審判の手続費用(調停費用,審判費用)は各自負担が原則であり(家事事件手続法28条1項),家庭裁判所が事情によりこれと異なる負担をさせることができるという規定になっています(同条2項)

そして,調停が成立した場合は,実務上,手続費用は各自負担とする調停条項になる事案がほとんどです

審判(裁判)になっても同じ考え方で、たとえ敗訴しても相手側の弁護士費用は支払わなくてすみ、裁判に関わる費用(印紙代等)のみの支払いとなります

弁護士に頼んだ場合は着手金で20万~と高額になります

余程こじれている場合や、お互いがむきになっている場合などでないと裁判は起こりにくいとも言えます

通知を無視はダメ

増額通知を無視して家賃を払わなければ家主側に有利になります

場合によっては即刻退去にも・・・

めんどくさいと思わずしっかりと対処しておきましょう

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まとめ

急に家賃が上がったり世の中の不条理ってたくさんありますが、従う必要はないんです

こちらが知らないことを前提として相手側が自分に都合の良いことだけを伝えてくる場合もあるので注意してください

管理会社である不動産屋は入居者より家主の味方であることが多いと言えます

管理を任してもらったことによって毎月の固定収入や入退去時の臨時収入が増えるからです

そんな不動産会社が入居者の味方に付くことはないと言っても過言ではないと思います

増額に同意しないなら退去してくれ
増額に同意しないなら更新は出来ない  など

もしそんなことを言われたのならその場で判断せずに一呼吸おいて考えてみましょう

そして行動あるのみです

不動産会社が間に入っている場合は最寄りの不動産協会で相談すると効果的です

その言動が違法な場合は罰金や営業停止などのペナルティがあり免許剥奪などもあり得るから、もし協会に訴えられたら困ると考える会社も多いです

不動産業界には4つの団体があります
一般的に4つの団体のいずれかに属していて、各団体は、加入した不動産業者の育成や指導、消費者からの相談、不動産流通市場の発展を目的とした政策提言などの様々な公益事業を展開しており属性以外大きな違いはないでしょう

参考
宅建協会

公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会

全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)は、各都道府県にある宅地建物取引業協会(宅建協会)の全国組織として設立された
会員業者数は10万弱にのぼるため、大半の不動産屋が全宅連に加盟していることになる

全日

公益社団法人 全日本不動産協会

全日本不動産協会(全日)は、業界最古の団体で、会員業者数は3万を超える

中小の不動産屋で、宅建協会に加入していなければ、全日に加入しています

FRK

一般社団法人 不動産流通経営協会

不動産流通経営協会(FRK)の会員業者数は300弱ですが業界大手不動産(住友不動産販売・三井のリハウス・東急リバブル等)・中堅不動産会社が会員

全住協

一般社団法人 全国住宅産業協会

全国住宅産業協会(全住協)は、建設会社の中堅企業が会員となっているケースが多い
FRKなどと重複して加盟している業者も多いのが特徴です

いずれかの協会に属しているので参考にしてください

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